ノイズと文脈干渉効果(運動学習理論⑦)

スポーツ科学

 運動技能を高める上でランダム練習が重要であることは以前紹介しています。ある程度の運動技能が身に付いている場合は、同じ運動を反復するブロック練習より、別の運動を途中で挟むことで運動学習が促進されます。

 スプリントを例にあげると、➀スプリント練習⇒②メディシンボールスロー⇒③再びスプリント練習のような順序で練習をします。

 このように、運動の順序が、運動技能の習得に影響を及ぼす現象を、文脈干渉効果といいます。

 なぜ、干渉が起こるのかという理由には、いくつか仮説があるようですが、前後に行った運動との共通点や違いを脳が意識的または無意識的に探索しているからというのが有力だそうです。

 先ほどのスプリントの例では、➀スプリントの次に②メディシンボールスローを行うと、運動自体は異なる動作ですが、股関節を強く伸展するという共通点に気が付きます。すると、③のスプリント練習では、股関節の力強い伸展を伴うスプリント動作を模索し、実行しようとする。といったイメージです。

 ②のメディシンボールスローのような練習をノイズといいます。高めたい運動スキルとは、異なる運動であるノイズを挟むことは、運動技能を高める上で重要な視点となりえます。

 そして、ノイズを挟む上では、狙いを持って設定するようにします。スプリントの例では、狙いを持ってメディシンボールスローというノイズを入れています。股関節の力強い伸展という大切な動作を引き出すという目標があるため、メディシンボールスローという運動が選択されたということになります。

 ノイズを設定する上では注意点もあります。 

 それは、うまく動作を達成しようと脳内で計画することです。つまり、スプリントの例なら、力強い股関節の伸展を身に付けたい⇒よってメディシンボールスローをするということが意識され、能動的な探索が行われているかがポイントです。つまり自分で変わろうとしているか、何も考えずに無意図的な練習になっていないかを指導者またはセルフでフィードバックする必要があるということです。

 運動プログラムにノイズを加え、文脈干渉効果を引き出すには、ある程度の技能と知識が選手に身に付いている必要はありそうです。スプリントのような日常動作の延長線上にある運動なら、ノイズを積極的に入れてもよさそうです。ただ、球技やより専門的な動作を伴う種目では、まずは基本の動作を学ぶことから始め、徐々にノイズを入れていく方がよさそうです。

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