予測と準備

コーチング

 陸上競技は、準備8割、本番2割で結果が決まるスポーツだと考えています。本番にミスをせず自分のパフォーマンスを最大限発揮するためには、どれだけ準備ができるかにかかっています。そして、準備とともに大切なことが、予測になります。目標を達成する過程で、どんな問題が考えられるのかを予測し、必要な準備をします。これを危機管理といいます。優れたリーダーやマネージャーは、起こりうる最悪を予測し、最大限の準備をし、本番は楽観的に対応します。しかし、結果の出ない組織や個人は、起こりうる事態を予測せず、または楽観的に予測し、最小限の準備で、悲観的な対応に追われます。

 自身の経験を振り返ってみても、予測と準備の大切さを痛感した出来事は多くあります。例えば、高校3年生の北関東大会、インターハイがかかった最重要大会です。調整も万全で、インターハイ出場権が得られる6位も十分可能な状態で当日を迎えました。予選も快調な走りで通過し、余力を残して次のラウンドに進みました。しかし、準決勝あたりから、身体に異変が生じます。どうもうまく体に力が入りません。熱中症のような症状になってしまったのです。この日は6月にもかかわらず気温が35℃ほどに上がってていました。前日に台風のような大雨が降り、湿度も非常に高かったのです。暑さにも慣れていない時期なので熱中症にかかりやすい条件が整っていたのです。しかし、当時は予測ができず、熱中症への準備ができていませんでした。前日に天気予報を見て、スポーツドリンクや氷等の準備を入念にしておえば、防ぐことができていたかもしれません。

 逆に、予測と準備で成功した経験もあります。指導者となり、ある10月の大会の出来事です。その日は、嵐のような天候で、気温が15℃を下回りました。前日より10℃近く低くなっていました。この日は100mがあったのですが、ウォーミングアップが重要だと前日に予測ができました。しかもタイムテーブルを見ると、100mのアップをしたい時間に周回競技が入っており、満足に走れないことが予想できます。よって、アップ場所を競技場の外にして、入念に身体を温め、召集所に向かわせました。また、組が後ろの方だったため、招集後、バックストレートで数本のダッシュをし、終わったら、ウィンドブレーカーをギリギリまで着ておくことを指示しました。その結果、実力的には入賞が厳しい状況でしたが、見事に決勝に残ることができました。他の選手を見ていると、雨で気温が低いにも関わらず、ウォーミングアップが不十分で、招集後もユニフォーム姿で待機していました。身体が冷え、実力者も力を発揮することができていないように見えました。

 以上のように、大会1日を見ても、準備の大切さがわかります。経験を積まないと気が付けないこともありますが、予測を繰り返す中で、準備力が磨かれます。また、長期的な計画における予測と準備にも注力していきましょう。その際には、以下のような視点から、問題点を予測し、解決策を準備します。

➀目標を達成するために行う行動計画⇒例)日誌を毎日書く⇒問題点は三日坊主になる⇒解決策はベッドの上にノートとペンを置いておく。

自己分析から⇒例)風邪をひきやすい⇒問題点は今週は気温が下がる⇒解決策はウィンドブレーカーを用意する。温かい飲み物にする

支援者・支援内容⇒例)大会1週間前トレーナーにケアしてもらう⇒問題点は予約がとれないことがある⇒解決策は3週間前には予約を入れておく

 そして、予想される問題点を、心・技・体・生活の分野に分けて書き出し、それぞれの改善策を用意しておきます。

 いつも同じような失敗を繰り返してしまうのが人間です。最大限の予測と準備を心がけ、本番で最高の結果を出しましょう。

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