ハードル走の授業

 ハードル走の授業で記録を向上させる方法について紹介します。対象は初心者やあまり運動をしていない方向けになります。

 体育の授業などでよくハードル走は行われていますが、どのようなことを教わりましたか?ハードルの跳び方や足の動かし方など様々あるでしょう。しかし、ハードル走記録向上のポイントは以下のスピード曲線のグラフを見ると少しわかります。

 グラフからわかることは、ハードル走の場合、1台目を越えたあたりでほぼトップスピードに入ってしまいます。(最終ハードルからゴールまでを除く)ちなみに100m走は以下になります。

 よってアプローチ(スタートから1台目まで)でどれだけスピードを上げられるかがレース全体を左右します。体育の授業でも同様であり、とにかくスタートから1台目までの練習をたくさんやると記録が向上します。50mハードルでは、授業の最初とおわりで、1秒以上速くなることもめずらしくありません。体育の授業ですから、あまり跳び方など気にせず、全力でスタートダッシュして1台目を飛び越してみましょう。

 以下は、TOSS(教育技術法則化運動)のセミナーで発表したハードル走授業の実践報告になります。

「泳がせればよい。泳いでいるうちに泳げるようになる。」「なわとびは、なわとびをさせればよい。」

向山氏の言葉である。

さらに向山洋一著の『体育授業を知的に』(明治図書)にハードル指導についての記載がある。

「ハードルは短距離走の競走だ。速く走れなくてはならない。しかし、どのように踏み切るかはどちらでもよい。決まりはない。速く走れる方法を探すことだ。」

以上を踏まえて、本実践は、「ハードル走は、ハードルを跳べばよい。そして、ハードル走を速く走ることの7割を決めているのがアプローチである。よってアプローチを速く走る方法を探すことだ。」という趣旨のもと行った。

 ハードル走は、走りながらハードルを跳んでいくため、ぶつけたり、転倒も起こる種目である。よって始めは誰でも恐怖心が先行する。しかし、恐る恐るスタートして跳んでいては記録の向上は見込めない。また、スピードがないため逆にハードルにひっかかりやすい。

そこで、最初のポイントは、スピード曲線による趣意説明である。ここで、スタートから1台目まで自分の持てる限りのスピードを出すことの大切さをインプットさせる。

 次のポイントはグループ練習である。3人に1組にすることで、空白が生じない。タイムによるフィードバックがすぐに行われるため、小さな進歩を実感できる。また、スタートから13mとハードル1台を跳ぶのみなので体力的にも何度も挑戦できた。回数を重ねることで、徐々に恐怖心もなくなり、どうすればアプローチをスピードを上げて走れるのか試行錯誤していた。

 最後は、アプローチのポイントの説明である。本実践はポイントを2つに絞っている。スタートの足を変えることによる歩数の調整と歩数のカウントである。それ以外の跳び方や手足の動かし方等は指導していない。理由は、運動制約仮説である。(Wulf 2007) 運動への声かけ(キューイング)にはエクスターナルフォーカスとインターナルフォーカスの2種類がある。エクスターナルフォーカスとは、身体外部の環境・運動の結果へ意識向けることである。例えば、空から紐で引かれているような姿勢で、地面を真下に押してなどがある。インターナルフォーカスとは、身体内部・身体運動に意識を向けることである。例えば、背筋を伸ばして姿勢を良くやお尻を使って力を出そうなどがある。2つを比べた場合、エクスターナルフォーカスは、無意識の制御が促進され、運動制御の働きが高まる。逆にインターナルフォーカスは、無意識の制御への介入は強くなり運動制御を妨害する。これは運動熟練者に限らず、初心者にも当てはまると言われている。本実践の「アプローチでできる限りスピードを上げ1台目のハードルを跳ぼう」や歩数のカウントは、運動の結果やカウントの発声という外部に意識を向けるエクスターナルフォーカスだと言える。結果的には、アプローチのスピードが向上し、50mハードルのタイムも大幅に短縮しているため、エクスターナルフォーカスのキューイングが効果的であることが示唆された。課題としては、アプローチのタイムを記録していなかったこと、アプローチの指導をハードル走単元のどこに入れると効果的なのかがあげられる。また、体育の授業におけるエクスターナルフォーカスのキューイングはハードル走以外にも有効なのか、今後検証していきたい。

参考文献

向山洋一著『体育授業を知的に』(明治図書)

Gabriele Wulf著 「注意と運動学習」

日本スプリント学会 「スプリント学ハンドブック」

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