エコロジカルアプローチ(運動学習理論④)

スポーツ科学

 エコロジカルアプローチとは、スキルは、人と環境の相互作用によって成り立っているという考え方です。つまり、習得したいスキルを、それに応じた環境を設定することによって、引き出していくことになります。

 具体的な例を挙げると、ランニングにおいて、腿があまり上がらず、スピードが出ていない選手がいたとします。これまでの古典的なアプローチでは、「もっと腿を高く上げて走りなさい」と指導してきました。しかし、エコロジカルアプローチの考え方では、このような場合、少し高さのあるミニハードルを並べ、その間を走らせます。選手は、ミニハードルがあるため、引っかからないように、腿を普段よりも高く上げて走らざるをえません。

 このように、環境を変えることにより、身体がそれに適応しようとする中で、スキル習得を目指していきます。先ほどの「腿を高く上げる動きを引き出すためのミニハードル走」のような練習法を、主導制約型アプローチといい、エコロジカルアプローチを実現させるための、有効な指導法といえます。

 主導制約型アプローチは、運動スキルに対して、課題生体環境の制約を意図的に設けます。

 課題を設定することによる主導制約型アプローチとは、例えば、小学生の体育の授業で、短距離走の記録を伸ばしたいと目標を立てたとします。このような場合は、走り方などの動作を改善することを目指してもよいのですが、速く走れない子は、単純に全力疾走する感覚がない場合が往々にしてあります。従来のアプロ―チでは、「腕を大きく振って、全力で走りなさい」になりますが、それが中々難しいのです。そこで、8秒間走という課題を設定します。8秒間走とは、スタートして、8秒後に笛がなります。笛の前にゴールできればクリア、次は、スタートラインを少し下げた状態から、スタートします。このように、「8秒間で、笛に間に合うようにゴールする」という課題を制約とすることで、全力疾走という動きを引き出してくアプロ―チとなります。

 生体に制約をかけるとは、例えば、腕を振らないで走ったり、腕をオーバーヘッドの状態で走ったりします。腕振りと下半身の動きがイマイチ連動していない場合は、有効な制約となることがあります。また、野球のバッティングでいうと、片腕でスイングしたり、と自分の身体の動きに意図的な制約をかけて、狙ったスキル習得を目指します。

 環境における制約とは、前述したミニハードル走がそれにあたります。他にも、サッカーにおいて、横の動きをもっと出したいと考えた時、通常よりも横長のコートを使用します。横にスペースができやすいため、横を使ったプレーが引き出されやすくなります。

 以上のような、エコロジカルアプローチの考え方は、これからの指導において、必須の考え方になると思っています。指導者は、目指すスキル習得のために、どのような環境を用意できるのかといった視点を持つ必要があります。

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