運動の協調(運動学習理論⑧)

スポーツ科学

 パフォーマンスを高める上で運動を協調させるスキルは重要な要素の1つです。筋力や柔軟性、持久力といった一般的な体力と平行して身に付ける必要があります。

 運動の協調とは、立ち幅跳びを例に考えてみます。跳躍動作なので直接地面に力を加えているのは、脚ですが、腕をタイミング良く振ることで、より遠くまで跳ぶことができます。腕を使わず脚だけで跳べば記録は低下するでしょう。

 立幅跳びの例は、運動の技能面での協調ですが、他にも、筋の協調やエネルギーの流れの協調もあるので以下のまとめていきます。

共収縮…運動中の関節、体幹の安定性を高めます。わかりやすいのが、RDL(ルーマニアン・デッドリフト)です。RDLは股関節の曲げ伸ばしを行う運動ですが、同時に、肩甲骨を寄せ、腰が張った状態をキープします。腹筋も出力している状態です。もし、共収縮ができていない場合は、動作中に腰が曲がってしまったり、肩甲骨の寄せが甘くなります。スポーツ動作で言うと、緊張させるべき局面や部位がしかるべき時に収縮し、出力できているかというスキルです。

関節の協調…代表的な例は、トリプルエクステンションです。股関節から生み出された力を、膝関節、足関節と連動させるスキルになります。プライオメトリクスなどのジャンプトレーニングが重要な理由の1つです。

上下左右の協調…立幅跳びでは、下半身と上半身の協調でしたが、左右の協調も重要です。スプリント動作なら、地面をキックする側の脚と前にスイングする側の脚のタイミングがパフォーマンスに影響します。いわゆる足が流れた状態は左右の協調が乱れていると言えるかもしれません。スキップは、左右の協調を学習する有効な練習だと考えています。

関節ごとの操作…例えば、スプリントなら、特にトップスピード局面の動作は、関節ごとに求めらる理想の操作があります。具体的には、接地している側の股関節が伸展している時に、膝関節は伸展を抑えることで、ピッチを高めることに貢献します。理想的なキック動作とは、股関節は伸展するが、膝関節はあまり動かさず、アイソメトリックな筋発揮するという状態です、つまり、股関節と膝関節は間接ごとに異なる操作が求められることになります。同様に、足関節もトップスピード局面では、足首を伸ばす底屈ではなく、関節の固定が理想だと言われています。

②の関節の協調とは、逆の概念ですが、求められる運動スキルに応じて、関節ごとの操作が必要になることもあります。ちなみに、関節の協調であるトリプルエクステンションですが、スプリントのトップスピード局面では確かに膝関節・足関節は固定された方が理想なら矛盾しているように思えます。しかし、トリプルエクステンションを生み出せる理想的なフィジカルは、運動パフォーマンスにポジティブな影響を与えます。あくまで運動スキルと土台なるフィジカルの状態は別だと考えましょう。

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