爆発的パワートレーニング

スポーツ科学

 競技力を向上させるために、最重要課題として、ウェイトトレーニングによる体づくりがあげられます。今回はそれに加え、爆発的パワーについて、S&Cコーチ河森直紀さんのセミナーを元に紹介します。

 爆発的パワーとは、投げる・跳ぶ・走る・打つなどのスポーツ動作において、パフォーマンスを最大限に発揮するため、短時間で大きな力積を発揮して、外的な物体または自分の身体を短時間で最大限に加速させる能力を指します。陸上競技でも、短距離走、投擲、跳躍と非常に短い時間で力を発揮することが求められていることは実感としてあるはずです。下の図を見てください。

 これは、力(ForceまたはLoad)と速度(Velocity)関係を表したものです。ここで知っておいて欲しいのは、速度が上がると発揮できる力が減少するということです。例えば、とても重いものを持ちあげようとしたら、素早くあげるのは難しく、ゆっくりじわじわあがっていきますよね。つまり筋肉の特性として、時間をかければ強い力を出せるが、短くなるほど力を出しにくいということになります。

 よって陸上競技のような、短い時間で爆発的なパワーが必要な競技においては、

①短時間で大きな力を立ち上げる能力

②筋収縮速度が上がっても大きな力を発揮し続ける能力

を鍛えるという視点が大切になります。

 そして、爆発的パワーには様々な要因が貢献してます。

①最大筋力

 最大筋力が向上すれば、速度もパワーも向上するということが下のグラフには示されています。つまり、1回で持ち上げることの出来る最大重量を向上させることは必要である。ということです。

②RFD(Rate of Force Development)

 RFDとは、力の立ち上がりを示します。以下のグラフでは、2人のアスリートのRFDを比較しています。Aの方が最大筋力は高いのですが、Bの方が力の立ち上がりが速いことがわかります。スタートダッシュなど一気に力を立ち上げていく能力はBの方が優れているといえるでしょう。

③SSC(stretch shortening cycle)

 SSCとは、強く、なおかつ速く伸張された筋(腱)がその弾性エネルギーと伸張反射作用により、直後に強く、なおかつ速く短縮される機能を指します。例えば、膝を曲げてしゃがみこんだ状態からジャンプするよりも、立位の状態から一気にしゃがんで一気にジャンプしたほうが高く飛び上がることができます。短距離走や跳躍においても、筋肉は引き伸ばされて、腱が弾性エネルギーを蓄積し、一気に強い力を発揮するというSSC運動は頻繁に発生しているため、重要なスキルであるといえます。

 高校時代、体は細いのに速い選手がいて、何が違うんだろう?と疑問に思うことがありました。恐らくは、爆発的パワーの発揮に優れた能力を持っていたのではないかと考えられます。次回以降どういった方法でトレーニングをしていけばよいか紹介していきます。

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