100mを速く走る条件の1つに、身長の高さがあげられます。ストライドは、脚の長さに規定されるため、高身長の方が有利であることは間違いありません。世界記録保持者のウサイン・ボルト選手は196cm、前世界記録保持者のアサファ・パウエル選手は190cm、日本のサニブラウン選手も190cmと長身です。長い手足を素早く動かすための強い筋力が備わっていることが条件になりますが、1歩の歩幅が長いことは、記録に大きく影響します。
では、低身長では、1流のスプリンターになれないのでしょうか?
実は、そんなことはありません。170cmほどの身長でも、世界レベルのスプリンターになっている選手は存在します。今回は、2人の1流選手を紹介するので、動画を見て、走りの特徴を分析してみてください。
アンドレ・ケーソン選手(アメリカ)
身長 170cm 体重 68kg
100m 9秒92 実績 1993年シュトゥットガルト世界選手権 100m銀メダル等
マイケル・フレイター選手(ジャマイカ)
身長 170cm 体重 67㎏
100m 9秒88 実績 2005年ヘルシンキ世界選手権 100m銀メダル等
2選手とも、100mの歩数は、48歩~50歩と、それほどストライドは長くありません。しかし、脚の回転数である、ピッチは、1秒間に5回前後出ており、高速回転で走ります。
走りの特徴として、共通しているのは、フロントサイドメカニクスを超ハイレベルに身に付けているということでしょう。地面をキックした脚が、一瞬にして、前に引き戻されています。膝下が身体の後方で回ったりせず、常に前方で回転しています。それでいて、脚を高く上げたりと、不自然な動きもありません。左下の画像のように、地面に接地した時には、4の字がつくられているのも共通しています。右の選手と比べても、動きの違いがわかります。
このような動きは、股関節周辺の筋力が、とてつもなく発達していなければできないでしょう。特に、脚を引き戻す際に使われる、内転筋や腸腰筋の強化は必須だと考えます。
最後に、2選手の走りは、低身長でも9秒台で走るための1つの完成形だと思います。素晴らしい走りなのは間違いありませんが、鍛え抜かれた身体があってこそ、実現できる走りでもあります。見た目だけを真似しようとしても、中々できるものではなく、記録に結びつけるのはもっと難しいでしょう。この2選手がどのようなトレーニングを日々行い、どんな意識で走っているのかを想像し、今の自分の走りの参考にしてほしいと思います。
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