ウォーミングアップの科学

スポーツ科学

 ウォーミングアップを科学的に分析したセミナーに参加しました。どのようなウォーミングアップを行うことがパフォーマンス向上に有効なのか。参考になった部分をまとめてみます。

 まず、ウォーミングアップの目的はRAMPと呼ばれ、以下のようなものがあります。Potentiationは、以前紹介したPAP(活動後増強)と関連があります。

Raise:筋温と血流を上げる。

Activate:主要な筋肉に神経のスイッチを入れる。(活性化、促通)

Mobilize:適切な可動域を確保する。

Potentiation:トレーニング、試合での強度をリハーサルする。

 次に、ウォーミングアップの効果ですが、以下の3つの要因で決まります。

1、ウォーミングアップ強度⇒全力の運動の何%くらいの強度で行うか。

2、ウォーミングアップ時間⇒ウォーミングアップを何分行うのか。

3、主運動までの休息時間⇒ウォーミングアップ終了から試合までの時間。

 そして、様々なウォーミングアップの研究から3つの最適な数値が以下のなります。

1、短距離走⇒強度40~60% 長距離走⇒強度60%~70%

2、5分~10分程度

3、5分程度

 まず、ウォーミングアップの時間ですが、5分~10分くらいで十分な効果が得られるというのが科学の答えになります。一般的には、もう少し長い時間行われているかと思いますが、もしかしたらウォーミングアップをやりすぎている可能性が示唆されます。

 というのも、運動をすることで生み出されたエネルギーは、80%熱に変換されるため、筋温を上げることがウォーミングアップの大きな目的となります。そして、筋温は10分程度の運動で上がりきってしまうのです。しかも筋温は、気温の影響は受けず、強度の高い運動の方が上昇するという特性があります。

 また、競技の特性によって筋温の影響は異なります。短距離走のような短時間高強度運動は筋温に強い影響を受けます。つまり、筋温が低い、体が冷えていると短距離走はパフォーマンスを出しづらくなります。外気温が低い日は、ウォーミングアップ後、筋温が低下しやすいです。レースまで時間が空いてしまう場合は、疲労がたまらない程度の運動を行い、筋温を保っておく必要があります。

 逆に長距離走などの長時間の運動は、ウォーミングアップのやりすぎに注意します。長距離走は、クーリングでも紹介したように、気温が高いとパフォーマンスが低下します。長すぎるウォーミングアップは、必要以上に筋温を上げ、エネルギーの無駄遣いになる可能性があります。競技後半のパフォーマンス低下にもつながることが考えられるので、気温によってアップ時間を短くするなどした方よいでしょう。

 10月に行われた中学生の大会で、当日強い雨に見舞われ、気温が急激に低下した時がありました。多くの選手がウィンドブレーカーなどを準備しておらず、明らかに体が冷えた状態でレースに出ていました。結果は予想通り、低水準な記録に。逆にレースギリギリまで厚着をして、できる運動をしてからレースに臨んだ選手が決勝に残っていました。ウォーミングアップも試合に勝つための作戦の1つなのです。

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