運動の記憶(運動学習理論⑤)

スポーツ科学

 運動パフォーマンスを向上させるためには、理想とする動きを理解し、反復する必要があります。練習を繰り返すことで、少しづつできるようになり、やがては、よりスムースに効率のよい動きに洗練されていきます。

 自転車に乗れるようになる過程を例にあげると、2回に1回は転んでいたのが、3回に1回になり、5回に1回になり、やがては、転ばなくなります。

 他の例だと、掛け算九九などは、小学校2年生で繰り返し暗唱しますが、ある程度の年齢になれば、間違えることはほぼなくなります。

 このような状態は、長期記憶固定化された状態といいます。

 競技パフォーマンスに話を戻すと、競技練習の目的は、長期記憶に、理想とする動きを固定化することだと言えます。

 長期記憶に固定化されることで、試合中など、様々な場面で、記憶から呼び出しが起こり、その時々に必要な動きを競技パフォーマンスとして発揮することができます。

 では、どのような方法で練習していけば、より効果的に、運動を長期記憶に固定化し、呼び出すことができるか考えていきます。

 アプローチの方法は大きく分けて2つあると考えられています。

 球技などを例にするとわかりやすいのですが、1つ目は、その競技に必要な動きを1つ1つ理解して、練習すていく方法です。

 バスケットボールなら、シュートを取り出して、どのようなフォームでシュートすれば教え、繰り返し練習する。次は、ドリブルの方法を教え、ドリブルの練習を繰り返す。次は、パス、、といった具合です。

 このような方法は、そもそも理想的なシュートやドリブルがわからない場合は、上達しようがないので、必要な過程ではあります。

 しかし、欠点もあり、1つ1つの動作を切り取って練習しても、実際にゲームで完全に生かせるかというと、条件が異なるため、記憶の呼び出しが起こりにくいのです。

 理想的なシュートフォームを1人で練習して身に付けたとしても、デフェンスがいれば同じようにはできないといったことは予想できます。

 そこで2つ目のアプローチとして、本番の形(ゲームや試合)に近いまたは同じように練習していく方法です。つまり、ゲーム中心に練習を組み立てていく方法になります。例えば、相手がいれば、必然と予想外の動きが増え、それに対応しようとします。

 本番形式の練習では、様々な条件が増え、ノイズが加わります。理想的な動作が何なのかという理解があることは必須になりますが、より長期記憶に固定化を促す練習方法だと言えます。

 最後に、より長期記憶に固定化していくコツとして、イメージトレーニング睡眠があります。

 練習後に、動画等で自分の動きを振り返り、理想とする動きと比べて、イメージトレーニングをするのです。その後に睡眠をしっかりととることで、記憶に定着していくという流れです。

 陸上競技でも、とても参考になる内容だったと思います。動画を見て振り返ることなどは、ルーティンにしていきましょう。

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