youtubeなどで走りのノウハウを紹介する動画を見ることがあります。よくあるのがいわゆるスプリントドリルや走りのフォームなどに着目した練習です。これらを行うと、走りの感覚やフォームが改善されるようで、コメント欄にも「感覚がよくなりました!参考になりました!」などの肯定的な意見が散見されることもあります。
…が、果たして本当に走りが良くなっているのでしょうか?
体操やフィギアスケートなどの演技の美しさを競う種目でしたら、見た目のフォームが大切です。しかし、陸上競技において良くなるとは、記録が向上することと言えると思います。
ドリルなどの練習をして、感覚が良くなり、フォームが綺麗になることと記録が向上することがイコールになっていれば問題ありません。ただ、感覚と実際の記録は関係がないことが多々あります。ドリルは上手なのに記録が向上しない、走りのフォームは綺麗なのに、さっぱり前に進まないなどのケースはよく見られる現象です。
つまり、自分の感覚はあてにしすぎない方がよい
というのが持論です。陸上競技で全国トップレベルの実力があり、かつキャリアも長い選手ならば話は変わってきますが、経験の浅い中高生などに関しては、感覚と記録を一致させるのは困難だと思います。
では、何を頼りに練習の成果を見ていけばよいかと言うと、感覚ではなく、具体的に測れる数値です。陸上競技の場合は、競技会で正確な記録が測れます。まずは試合で出て、本当に記録が向上しているのかが最重要ポイントです。仮に感覚が良い気がしたとしても、記録が長期間伸びていない場合は、普段の練習が間違っていることもありえます。また、陸上競技ではない球技系の選手の場合も、ストップウォッチでよいのでタイムを測ってみましょう。陸上選手が走りを教えるスプリントコーチという職業があるようですが、教わった練習が本当に正しいかは、継続してタイムを測定し、判断するしかありません。
ただ、試合の数は限られており、オフシーズンは基本的に試合がありません。よって、コントロールテストという形で工夫して記録を測定する機会をつくりましょう。例えば、メディシンボール投げの記録やウェイトトレーニングの重量、立ち幅跳び、立ち5段跳び、50m走や300m走、12分間走など、目的に合わせて選ぶことができます。自身の経験を振り返ってみても、100mの記録が大幅に伸びているときは、クリーンの重量や跳躍系の記録が向上しています。(競技レベルが上がるほど相関は少なくなりますが)
逆に言うと、これらの記録が向上していない場合は、特に中高生は、実際の競技の記録も伸びていないことが多いのではないかと思います。筋力や筋出力が向上していない、トレーニングや食事で体づくりができていないと記録が上がらないことが予想されます。
もちろん、感覚を頼りに練習することが悪いということではありません。しかし、競技経験が浅い場合は、シンプルに走ってタイム計測を定期的に行う。体づくりを行い、筋力や筋出力の向上を目指す。方が実際のパフォーマンスに直結します。中高生の部活動は時間が限られている場合がほとんどですので、何を優先させるのかということを考え練習していきましょう。
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