スプリント技術の1つとして、足を身体の前方で回転させる、フロイントサイドメカニクスというものがあります。逆に足が身体の後方で回転している走りは、いわゆる「足が流れている」状態と言われ、減速の原因だと考えられています。今回は、フロイントサイドメカニクスについての個人的な考えを実体験をもとに述べていきます。
まず、なぜフロントサイドメカニクスが必要かというと、短距離を速く走る方法~理論編~②でも説明したように、速く走れない人は地面に力を必要以上に加えようとするという特徴が見られます。膝を使って後方に過剰にキックする動作は、足のリカバリーを遅らせ、「足が流れる状態」をつくってしまうことが考えられます。よって、地面に着地したら、次に瞬間には足を前に素早くリカバリーさせることが、特にスピードが乗ってきてからの動きには求められています。
ここからは、感覚的な話になります。このフロントサイドメカニクス、確かにスプリントパフォーマンスの向上に必要な技術ではあると思います。ただ、過剰に意識し、見た目の動きにとらわれすぎるのもよくないと考えています。たまに、不自然に足を前に出して走ろうとしている人を見ることがありますが、肝心のスピードが出ている感じがしません。トップスプリンターの場合は、足を前で回転させているのですが、あくまで、自然な動きの中で実現させています。よい走りをした結果、足が前に勝手に出てきて、フロントサイドメカニクスになっているというイメージをもっています。私の場合も、自己記録を出した時の走りなどは、映像で確認すると足を前で回転させられている印象があります。ただ、意識してそれをおこなっているかというとそうでもないです。
では、具体的にフロントサイドメカニクスを身に付けるためにはどうすればよいかについて私見を述べていきます。まずは、殿筋が使える状態をつくることは重要だと思います。股関節を中心とした理想的なキック動作を習得することで、膝を使って、後方に蹴り上げるという無駄な動作をする必要がなくなります。次に走りの中で、足が前に出てくる動きを引き出していきます。1つは、ミニハードル走です。ハードルがあるので、強制的に足を前に出していくしかありません。また、スレッド走も、フロントサイドメカニクスを実現するための理想的なキック動作を習得するトレーニングになります。走りではありませんが、スキップは、地面をキックしたら、素早く脚を前にリカバリーさせるというイメージづくりには最適です。200m以上のロングスプリントの練習も、足が流れていたら走り切れないので、スプリント技術を高める上で有効でしょう。
以上のように、フロントサイドメカニクスは、一朝一夕に身に付く技術ではなさそうです。足を前で回転させながら走るという、見かけの動作ならできなくはないのですが、全力疾走すればすぐに崩れてしまいます。体づくりとスプリント練習を繰り返し行い、自分の感覚と技術を磨いていくことが必要不可欠だと考えています。
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