運動生理学(ATPの生成)で解説したように、一定以上の負荷がかかる運動では、ATPの生成が間に合わなくなります。(クレアチン酸の分解だけでは、7秒。糖質の分解では、30秒。)
そこで、酸素を用いて、ATPを再合成する必要があります。ATPの再合成は、細胞のミトコンドリアで行われています。よって、ミトコンドリアの量を増やすことができれば、再合成されるATPの量も増加します。
また、ミトコンドリアにより酸素を送るためには、毛細血管の量や、酸素を運搬するヘモグロビンの量も関係してきます。
つまり、ミトコンドリアの量と毛細血管の量をトレーニングによって増やすことが、練習をする上で考えるべきことになります。短距離走においては、高いスピードを維持する持久力に関連してきます。
まず、ミトコンドリアを増やすためには、ATPを枯渇させるようなトレーニングが効果的です。例えば、150m×3(レスト5分)。150mは、全力で行けば、ATPを使い果たす距離です。5分間休むことで、ある程度回復させ、再び使い果たすという練習を繰り返していきます。250mや300mを走る場合は、クレアチン酸と糖質が枯渇し、ATPは大幅に減ります。250m×4や(300m+100m)などを行う場合は、スピードを出しながらも、ある程度回復させてから、次を走るようにします。ATPの回復が不十分だと、速筋が使えなくなるため、ペース配分が可能な距離で、ATPを減らしていきます。
次に、毛細血管を増やすためのトレーニングとしては、呼吸が乱れない程度の負荷は効果的だといわれています。例えば、30分ほどのジョギングが有効だと思われます。また、短距離選手であっても、有酸素的な能力が必要でないわけではありません。特に400mの選手などは、有酸素的能力の土台としても、必要なトレーニングだといえます。
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